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『フォッサマグナ』藤岡換太郎

 大学の頃から25年以上も関わってきた山梨県早川町。そこは南アルプスへの登山口としても知られ、身延山や七面山など山岳信仰の山々も近い。太平洋へ注ぐ富士川の支流早川は深い渓谷を流れているが、その中流域にある新倉で糸魚川静岡構造線の断層が現れる。糸魚川から諏訪湖、早川を通って静岡を結ぶ構造線はフォッサマグナの西の端に位置する。
 フォッサマグナという言葉は有名だが、その発見も命名もナウマンだということはあまり知られていない。あのナウマン象化石の発見者である。明治の初めいわゆるお雇い外国人として来日し、さっそく地質調査旅行に出かけている。長野県の平沢という集落に泊まった翌朝、そこから2000m級の南アルプスとさらに奥の富士山を望み、その大きな構造に驚いたと言う。平坦な大地から一気に高く聳え立つような地形は類を見ないと、ドイツに帰国後その地形をフォッサマグナと名づけた。フォッサは地溝、マグナは大きなの意味。それから140年、今もそれが日本の地形を考える鍵になっているのだから、ナウマンの指摘は驚愕だ。天才は勘が先で、証明が後から追いついてくる。
 風景とは見る人の頭の中で構造化される。だからこそ建築を学ぶものは、モノを見る眼を徹底的に養わなければならない。発見は創造の端緒だから。(2020.2.5)