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『五重塔』幸田露伴

 江戸は谷中感応寺五重塔の建設を巡る話。技量はありながらも世渡りが下手で「のっそり」とあだ名される大工十兵衛。こののっそりが実に面白い。
 塔建設の噂を聞くや、親方源太をさしおいて上人様に我こそはと模型を作り直談判。義理と人情の江戸っ子として描かれる親方源太は一緒にやろうと弟子を気遣うところ、のっそりは一人じゃなきゃ意味が無いと断ってしまう。

 さぁ、五重塔を立てることになった「のっそり」。大工の心意気を、露伴が明治の中期に描いているんだから、江戸から明治にかけて時代とともにガラガラと人の心も変化したのですね。こうした時代の心情をずっと文学は記録しているのです。