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『春の数えかた』日高敏隆

 日高先生は数多くの動物行動学の専門書を翻訳されている。ローレンツの『ソロモンの指環』もそう、建築業界ではおなじみのE.ホールの『かくれた次元』もそう、1960年代にこうした視点で世界を眺めておられたことにキュンとなる。
 本書のタイトルと表紙の美しさに、文章の内容がすっかり重なっている。つまり本屋で初めて手に取った時の感触のままなのです。カマキリが高いところに卵を産むとその冬は雪が深いとか、昼に飛ぶガはいるが夜に飛ぶチョウはいないとか、17年ゼミや13年ゼミの話とか、自然界の動物や植物の不思議をやさしく解き明かしてくれるんだけど、それがまったく知識や教養としてじゃなくて、自然あるいは世界というものの本質に迫っていく姿勢がキレイなのだ。
 その姿勢や視点に対しての気づきが多く、それが嬉しくて何度も読む。建築というのはいつでも世界の捉えかたを探りつつ実践をともなうものだから、ぼくにとってはすでに建ってしまっている建築よりも世界を捉えるヒントになるのかもしれない。