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『鳩どもの家』中上健次

 ストーンズ、マイルス、ジミヘン。青春の通過儀礼のように、彼らを通り抜けてきた人は多いでしょう。「中上健次の小説は、ギザギザした破壊的な力を保持するためにカセットで録音し、過去のスタイルをぶち破るために恐ろしい速さでギターを歯で弾いているようなところがある」と村上龍は文庫本の書評に書いている。文庫化されたのがちょうど1980年だから、「ギザギザハートの子守唄」より3年前の〈ギザギザ〉。
 この〈ギザギザ〉した小説がずっと好きで、『鳩どもの家』と解説文はことあるごとに読み返している。田舎で育った高校生の頃のどうにもならない苛立ちと諦めがたまらなく沁みる。紀州から出た中上健次は『灰色のコカコーラ』『鳩どもの家』からはじまって『岬』『枯木灘』『千年の愉楽』と一気に大作家へと駆け上がることになります。ぼくにとってもっとも憧れる作家、いちばん好きな作家です。