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『いちばんここに似合う人』ミランダ・ジュライ

 松家仁之さんが選んだ新潮クレストブックスの『美しい子ども』には11の短編が収録されている。いずれも短編の楽しさを存分に味あわせてくれるが、そこからさらに読みたくなった一人がミランダ・ジュライ。彼女の短編集が、同じく新潮クレストブックスから岸本佐知子の名訳で楽しめる。何と言ってもタイトル『No One Belongs Here More Than You』に、一番ここに似合う人とつけるセンスですから。
 「妹」や「水泳プール」などどれもぶっ飛んでいて、読みながらついつい笑ってしまったり。なのにいつしか、おそらく誰もが誰にも口にしたこともない一人一人の頭と身体のアンバランスがなんのためらいもなくあふれてくる彼女の世界に浸っていく。
 なんとかかんとか生きているのが精一杯で、夢とうつつの間をあちこち行ったり来たりしているようなぼくらの人生は、まるでミランダ・ジュライの短編集みたいなものだ。そして、人間への洞察力とスピード感、言葉にしたこともないような無意識、枕と下げの味わい、そう、彼女の短編小説はすぐれた落語だ。(2018.2.9)