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『脳のなかの幽霊』V.S.ラマチャンドラン

 ものごとを単純化することで世界をわかりやすく理解できるのは良いとしても、その単純化された思考でしかものごとを理解できなくなっているとしたら、あまり喜ばしいことではない。例えば二元論は世界を把握するわかりやすい方法ですが、たいてい私たちが求めているのはそのどちらかではなく、そのどちらもだ。
 事故などで手足を失った人たちの中で、まだ手足があるような感覚が残ることがあってその幽霊のような幻視は激しい痛みをともなう。ところが治療すべき手足がないということが近代医学にとってはかなり不条理な命題なわけです。そこでこの難問を解き明かそうとしたのが本書の著者、神経内科医のラマチャンドラン。
 ラマチャンドランはアメリカで西洋医学を学んだインド人だが、西洋医学と東洋医学を掛け渡すような第3のアプローチは二元論をさらりとかわし、まるで手品のようにたくさんの怪奇な症状の謎を次々と解き明かし、「意識」という概念を「形而上」から引きずりおろしていく。あらゆる障壁はこうして取り払うのだよと教えられるようです。本質はいつもこうした特異な〈例外〉から解き明かされるものらしい。